月の菓子だより of isinan

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日本人の生活に深くかかわりのある和菓子。
季節感や行事、そのお菓子を食べる意味などを知ることでまた一つ食べる楽しさも広がることと思います。
当庵では、そんなお菓子を月々でご紹介し、より多くのお客様に和菓子に親しみ、愉しんでいただければと思います。

栗蒸し羊かん.JPG1127611390[1].jpeg




今月は秋を代表する味覚、「栗」を使ったお菓子二趣をご紹介いたします。

 野山は秋の彩りに包まれ、山の幸を求めて栗拾いや、きのこ狩りなど、味覚の豊かな季節。その中でも栗は、縄文の時代より山土産(やまづと)の王様として日本人の食生活とつながりが深く、お菓子としても和洋を問わず、幅広く使われています。

 その山土産の王様をふんだんに使った一真菴の「栗むし羊かん」と「栗きんとん」。

 栗むし羊かんは、じっくりと蜜煮した栗を蒸し羊かんに粒ごと入れ、松風(醤油風味の蒸しカステラ)を流し合わせたことで互いの味を引き立て、三味一体の味は驚きです。

 また、栗きんとんは、栗一〇〇%で、栗の粒々感、ぽっくりした食感を活かした栗そのもののお菓子です。

 この二趣の栗菓子は、その豊かな味わいから、なるほど山土産の王様を実感させてくれるお菓子です。

銀杏餅.JPG


 秋の色が深まった十一月は 風の冷たさを感じながらも穏やかな日和の続く好季です この町の大学通りや一ツ橋の公孫樹も色づき始め その実を拾う人の姿も・・・  

 そんな季節にふさわしいお菓子「銀杏餅」 茶の湯裏千家の露地には 千宗旦手植え公孫樹があり 毎年十一月十九日の宗旦忌にはこの実を使ってつくられた銀杏餅がだされるのが恒例となっています

 当菴の銀杏餅は漉し餡を道明寺糒で包み そこに銀杏を添えて蒸し上げました  

 この素朴な菓子は 銀杏のほろ苦さと漉し餡とが調和した野趣ある季節のお菓子です

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冬の到来。十二月は椿の葉を使ったお菓子「椿餅」をご紹介いたします。

 椿餅が文献上に見られるのは平安時代です 紫式部の代表作「源氏物語」の「若菜上」に つばいもちひと書かれています これは蹴鞠を終え 梨や柑橘類の果物と一緒に椿餅を談笑しながら食べあう若者たちの姿が描かれた場面です このように椿餅はこの頃から食され 愛され続けてきた和菓子で 文献上で知られる最も古い純国産の菓子(和菓子)のひとつといわれています
 当菴の椿餅は ふんわりとした軟らかい白餅でこれも軟らかい漉餡を包み そのままでは形が取れないため うっすらと寒天の衣を着せて椿の葉で挟んで仕上げました 
 寒々としたこの時期に青々とした椿の葉と軟らかい白餅が どこかほっと和ませてくれる季節のお菓子です


 

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(毎年、内容は変わります)

一月は、新しい年にふさわしいお菓子「花びら餅」をご紹介いたします。

 宮中では古くから「歯固の儀式」として 固いものを口にすることで齢を固め 長寿を願う風習がありました これが伝承される過程で生まれたと考えられている「菱葩」(包み雑煮とも呼ばれていた)が花びら餅の原形とされています

 白餅を丸くのばし 小豆汁で染めた菱形の赤餅を重ね 牛蒡(押し鮎に見立てたもの 鮎は年魚と云われ正月の魚として珍重されていた)と 白味噌仕立ての味噌餡をのせて二つ折りにしたもので 現在のような形は明治中期頃に完成されたものです

 また茶の湯では 明治時代に裏千家玄々斎が禁裏より許され「花びら餅」の名で初釜に用いるようになったのが始まりとされています

 このように花びら餅は 気位が高く気品を備え 風雅で洗練し尽くされた茶席菓子です 新しい年の始まりには ぜひこのお菓子をお薄と共にお楽しみください